第7回講義 7/3 教科書pp. 140−148
U有機化合物の基本構造
1. 脂肪族炭化水素
有機化合物の分類:
・ 脂肪族炭化水素(aliphatic hydrocarbon): 直鎖あるいは枝分れを含む鎖式の
炭素骨格をもつ炭化水素
・ 脂環式炭化水素
(alicyclic hydrocarbon) : 炭素原子が環状に結合した構造の有機
化合物のうち芳香族化合物を除いたもの
・ 芳香族炭化水素 (aromatic
hydrocarbon): ベンゼン環をもつ炭化水素
[1] 炭素鎖、不飽和結合
アルカン(alkane)、アルケン(alkene)
炭素数 |
alkane |
対応する alkene |
1 |
methane |
― |
2 |
ethane |
ethene (ethylene) |
3 |
propane |
propene (propylene) |
4 |
butane |
1-butene, 2-butene |
5 |
pentane |
1-pentene, 2-pentene |
6 |
hexane |
1-hexene, 2-hexene, 3-hexene |
命名法(IUPAC命名法):
1) 主要な官能基を決め、その官能基を含む最も長い炭素鎖をきめる。
優先順位 官能基
1 カルボン酸 -COOH
2 酸無水物 -CO-O-COR
3 エステル -COOR
4 アミド -CON<
5 ニトリル -CN
6 アルデヒド -CHO
7 ケトン
>C=O
8 アルコール
-C-OH
9 アミン
-N<
10 アルケン C=C
11 アルキン C三C
2) その炭素鎖に番号をつける。
3) 置換基の位置番号と名称を書く。2つ以上の置換基がある場合には
アルファベット順に書く。
例:
優先順位 COOH >
CHO > OH
3-Formyl-5-hydroxypentanoic acid
cis-trans異性体が存在する場合、E/Z表示が推奨されている。
EかZかは優先順位で決定する。原子番号の大きいものほど、
優先順位が高くなる。優先順位が高いもの同士が同じ側なら
Z(ドイツ語、Zusammen)、反対側ならE(Entgegen)をつける。
[2]性質
直鎖のアルカン(alkane):
反応性が乏しい
環状のアルカン(cycloalkane):
5員環、6員環は炭素‐炭素間の結合角が109度に近く
安定である。しかし、3員環、4員環は 炭素‐炭素
間の結合角に大きな歪があり不安定になりやすい。
アルケン、アルキンの反応性
二重結合、三重結合のπ電子は反応性に富み、いろいろな
試薬からの攻撃を受けて生成物へと変化する。
反応例(曲線矢印は電子の移動方向を示す):
芳香族炭化水素(aromatic
hydrocarbon)
[1] ベンゼンの構造、共鳴
性質
1.
付加反応
二重結合は共役安定化しているので、反応性は乏しいが、
反応性が強い試薬や反応条件によっては付加反応
は起こる。下図の例はラジカル反応である。Cl2 → 2Cl・
2.
置換反応
求電子反応によりベンゼン環の水素と置き換わる反応が起こる。
(注:図中の曲線矢印は通常、電子の移動方向を示す)
[2] 置換反応の機構
・ フェノールの臭素化(OH基: 電子供与基)
ベンゼン環の電子密度の大きいところ(共鳴効果)に求電子試薬が
攻撃する。その結果、一旦ベンゼン環がこわれる。その後、環上の
水素(H+)が外れてベンゼン環が再生される。
OH基による共鳴効果(resonance
effect)はo, p位における置換反応を
大いに促進するが、 OH基による電子の引きつけ効果(誘起効果、
inductive effect)は反応性をごく少し低下させる作用がある。
・ ニトロベンゼンの臭素化(ニトロ基: 電子吸引基)
o, p位は電子密度が小さくなるのでm位のπ電子にBrd+
が攻撃する。(注:図中の曲線矢印は通常、電子の移動方向を示す)
-------- 第7回講義ノート 終り ----------
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